国語の教員でしたが、アメリカで子育てをして、日本に帰国しました。

高校の国語科教員を退職し、長女が1歳の時に渡米し、2022年に帰国しました。3人目も無事出産しました。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』を読みました。

久々に海外在住ブログらしいことを書こうかなと思います。

 

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』を読みました。続編です。これにて完結とのこと。ちょっとあっけないけれど、「子育て」の終わりはこのようにあっけなくやって来るのだと、筆者と共に少し切なく感じました。

 

あっけないと書いてしまいましたが、日本で普通に生活していたら考えられないような出来事が次々と起こる、みかこさんの身の回りです。十分ドラマティックではあります。イギリスの、労働者階級としてたくましく生きる筆者一家の鋭い感受性に、読めば読むほど胸を打たれます。息子さんが、いいんですよね…。本当にアシタカじゃないけれど、「曇りなき眼(まなこ)」とはこういうことなんだろうなという、そういう眼で見た世界に対して、ハっとすることをいつも言ってくれるんです。

 

元々、前作の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を知ったのは、日本在住のブロガーさんの記事でした。その後、在米日本人の何人もの方がこの本について記事にされていて、私も手にとってみたのです。読んでみて、この本が日本で流行っているということが、とても意外に思われました。「日本の人は、こういうのを読んで面白いのだろうか?」と。

 

この、『ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー』というのは、みかこさんのお子さんがノートに走り書きしていた言葉です。日本人的な感性でちょっと聞いただけだと、何だかオシャレでポップな雰囲気がしますが、これは、人種のことなのです。

 

この本には、よく筆者の住環境のことが出てくるのですが、全く同じとはいえないまでも、実は、我が家の周辺の状況と似ているところがあるのです。だから、この本は私にとって「あるある」がいっぱい詰まった本なのです。

 

我が家がある地区は、市内でも古くからある地区であり、開発が遅れている地域でもあります。ビーチや、古くからの名所はあるのですが、私達が居を構えた4年ほど前までは、何ともいえない独特の雰囲気がありました。

 

何というか、新しく渡米してきたようなアジア系住民はあまり好んで住まない感じでした。小さな日本人ママ友コミュニティもありますが、アメリカ人の旦那さんの地縁があるという人が多い印象です。私たちのような新参の日本人夫婦はかなり珍しいです(というか唯一です)。全体的に白人の住民が目立ち、夫婦共にアジア系、東南アジア系の住民は、以前はほとんどみられませんでした。高級住宅街もありますが、私達が住んでいる地域は、長く住んでいる労働者階級の白人が多いようでした。あからさまなものから、目にはみえないものまで、やはり差別を感じることがよくありました。一つ一つは書ききれないのです。

 

どうしてそこを住居に選んだかというと、ひとえに今後の伸びしろと、コストパフォーマンスの高さからでした。値段と、手に入る物件と通勤距離との兼ね合いで見た時に、その当時、一番良かったところだったのです。同じ頃に近くに引っ越してきたような新規住民は、夫婦共働きで知的労働に従事しているようなエリートカップルもいました。アジア系の住民も近年増えてきました。まさに、みかこさんのいうような「まだら模様」の住宅街になりつつあるのです。

 

私達の住む地区から一本大きな道路を隔てたところに、更に低所得者向けのカラフルな住宅が立ち並んでいます。そこへ行くと、完全に住んでいる人の人種が変わります。要するに、アフリカ系の住民がたくさん住んでいる地区になります。その多くは、戦後や、もっと最近、移民として来た人達なのかなという印象を受けました。色鮮やかなイスラム教徒の長い衣服を身につけた女性達をよく見かけるからです。その地区の中に、ボランティアや寄付で運営されている市民センターのようなところがあり、そこで無料のESL(英語クラス)を開催していたので、引っ越した最初の頃に通っていました。生徒は7割アフリカ系、3割中東系で、例外的に一人が日本人の私でした。このESLはいろいろな意味で学ぶことが多く、私は大好きだったのですが、子ども達をその間預かってもらう必要があり、子ども達がそれを嫌がったため、あまり長くは続けられませんでした。

 

私達の住む地域の更に南側へいくと、すぐに市の境界があり、別の市になります。この市がまた特に治安が悪く、車で通るだけで「ここはヤバい」と肌で感じることができます。ダウンタウンも相当悪化してしまいましたが、ここは「元々ヤバい」というところのようです。トランプ政権になってから、白人至上主義の集会が行われたのもこの市でした。

 

更に南下したところにある市などは、住民一人あたりの犯罪発生率が全米最悪(当時)と言われる市があったりと…この5年間でそういう話だったらいくらでもできるようになりました。大麻の匂いもすぐに感知できるようになりました。治安と大麻の匂いは関連しています。(我が州では21歳以上のアメリカ人は合法です)

 

そういう環境で生活していると、いろいろと麻痺してくるのですが、客観的にみると本当にすごいところで生活しているなと我ながら思います。発砲音とかいつものことですし、本当にいつも車で通るところや近所で銃の事件があり、死者も出ています(全てがいちいち大きなニュースにはなりません)。そういう地域密着の事件やニュースは、地域のニュースブログがあって、元々プロのマスコミだった人が運営しています。地域のスモールビジネスがスポンサーになっていて、地域に何かあるとすぐに取材してくれて、大変助かっています。

 

一番最近の犯罪系のニュースは「カー・ジャック」でした。車道の真ん中に犬を連れた男が立っていたので、通りがかった人が車を止めて助けが必要か尋ねたところ、銃を突きつけて車を奪って逃げた、という事件です。怖すぎますが、怪我人が出ていないので全くニュースにもならない事件です。でも、このような犯罪にはなかなかお目にかからない日本人として、「簡単に車から出てはいけない」という教訓を得ました。銃を持った人と向き合ってしまったら、何なら怪我をさせてでも、アクセルを踏んで逃げなければならない、と。そういうことを日常的に考えている、日常です。

 

このような物騒な話ばかりではないのですが、こうやってこの地区に住んで生活を続けていく中で、ここに住んでいなければ体験できなかったことが色々とあるなあ…と思い返しています。

 

ブレイディみかこさんのように、身近に起きた個人的な出来事を政治や社会情勢にまで帰納していく考察力が私には全く無いのですが、もしそんなことができるとしたら、私のアメリカ生活を書いた本は以下のような目次になるかな、と思います。果たして面白いのかどうかは別として…。



  1. 日本語を拒否するマリー
  2. シリアからやって来たママ
  3. 長女の転校
  4. パッケージ泥棒
  5. 続・パッケージ泥棒
  6. 続続・パッケージ泥棒
  7. 四軒隣のドラッグハウス
  8. 公園にある違法薬物の注射器用ゴミ箱
  9. 隣人1はパーティピーポー
  10. 斜向かいのトランプ支持者
  11. 隣人2の置き土産
  12. 新しき隣人
  13. 娘の親友はママ二人のゲイカップル
  14. 哀しきBBQ
  15. 「ユークレーン」ってどこの国?
  16. 意識高いリベラルママ達のfacebook
  17. 日本語を話す子ども同士のトラブル
  18. 剥ぎ取られたBLM、塗りつぶされたストリートアート
  19. 南アフリカにプリスクールの姉妹校を建てた校長の話
  20. 超リベラル市長の末路
  21. 新しい市長の誕生、新しい時代がやって来るか?