国語の教員でしたが、アメリカで子育てをして、日本に帰国しました。

高校の国語科教員を退職し、長女が1歳の時に渡米し、2022年に帰国しました。3人目も無事出産しました。

【TwoSet Violin】の魅力を語ります。

はじめに

はてなブログの「特別お題キャンペーン」に今回、初参加してみたいと思います。今回の特別お題は、「わたしの推し 」なんです。

このキャンペーンに投稿することで、TwoSet Violin(トゥーセット・バイオリン, 以下TwoSet)がより多くの人の目に留まるようになるのではないか、と考えました。私はこの記事で、10000字を費やし、自分の持てる筆舌の限りを尽くして、TwoSetを推しまくりたいと思います。

 

 

TwoSet Violinとは?

www.twosetviolin.com

公式HPをクリックすると、二人の男性の写真が出てきます。一人は黒縁メガネのBrett(ブレット)。もう一人の金縁メガネの方はEddy(エディ)。これが、TwoSet Violin の二人です。

 

…はっきり言ってぱっと見、イケてない、非モテ系のアラサー男子2名です。

今日はこの、どちらかというともっさりとした印象の二人を、「はあ〜〜もうカッコ良い!ホント、大好き!!」とどうしようもなく思ってしまうようになった経緯を書き、読み終わる頃には皆さんにもTwoSet のことが大好きになってもらえればと思っています。

 

何をする人達なの?

TwoSet Violin とは、台湾系オーストラリア人のバイオリニスト2人組ユーチューバーで、番組はほぼ全編オーストラリア英語です(たまに北京語や日本語を始め様々な国の言葉を話しています)。彼らは、クラシック音楽とお笑いを融合させた自虐的な動画を作成、投稿して世界中から共感を集め、クラシックや音楽に興味のない若者もファンに取り込み今なお成長中。2022年1月現在でチャンネル登録者数346万人にのぼり、クラシックジャンルのチャンネルとしては他に類を見ません。バイオリニストでもあり、お笑い芸人(コメディアン)でもある二人。バイオリンは1挺(丁)・2挺と数えるので、言ってみればクラシック界の「ニ丁拳銃」ならぬ「ニ丁バイオリン」です。

 

「ユーチューバー」というと、何となく軽い感じがしますが、二人とも音大を出てオーストラリア内各地のプロオーケストラで弾いていた、プロのバイオリニストです。しかしそう書くとどうも堅苦しい感じがしますが、動画は基本ふざけています。喋っているところだけ見ると、「普通のそこらへんにいるお兄さん」なんです。いや、普通以上に「おバカ」への振り切れ方がすごい、変なお兄さん達なんです。ストラヴィンスキーの「春の祭典」バレエを街中で踊る(?)動画↓

■「春の祭典」があなたを支配する時


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「バイオリニスト」というと、何だか近寄り難かったり、お上品で物腰が優雅なイメージがありますが、この二人は全く違っていて、動画では基本的にいつも二人でふざけて大爆笑しています。おバカなことをやるし、ちょっと下品なことも言うし、全然上手く弾けないところも隠さず見せちゃう、男子高校生がそのまま大人になったみたいなノリの二人です。

 

ただ、他と違うのは、二人はバイオリンとクラシック音楽が大好きだということです。若者がポップスやロック、R&Bに夢中になるのと同じように、車のラジオでお気に入りの曲がかかるとこうなります。↓

■車の中で神曲がかかった時


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そして、いつも「今日練習した?」「あー練習しなきゃ!」「練習してね!」と、視聴者と同じ目線で語りかけてくれるんです。合言葉は「Practice!(練習してね!)」。だから、彼らの視聴者の中には、昔やっていた楽器を引っ張り出してきたとか、今までやったことがなかったバイオリンを始めてみたという人達が、世界中で続出しているんです。

 

そして、彼らもまた視聴者から「Practice!」と言われる立場にあることを自覚しています。決して完璧ではない自分たちの演奏を、隠さずズルせず、自分たちで責任を引き受けているのです。全く練習していない曲を初見で弾いてみて臨時記号で間違えたりとか、15分で練習して弾いてみる、というのもあります。でもそういうのを笑いに変えてしまって、お互い大爆笑しているのが、何だか観ていて救われるのです。

■バイオリンデュエット初見の無理ゲー挑戦


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ちなみに、日本で人気がイマイチなのは、英語コンテンツだということも一因としてあると思うのですが、今はYouTubeで日本語訳が自動生成できるようになったので、敷居も低くなったのではないでしょうか。(ぜひ設定してみてください)

 

かくいう私も英語が本当に苦手で、それまで海外ドラマも洋画も全く興味がありませんでした。しかし、一身上の都合でアメリカで生活することになり、勉強のために何か英語のものを見ようとしたのですが、長続きしなかったのです。TwoSetは、そんな自分の英語の勉強のためと、子どもの習い事に役立つのではないかと見始めて、「何この人たち!?」と出てくる動画を次々と観てしまい、気がついたらどっぷりと沼にハマっていました。(そして私も、ついでに子どもも「練習」するようになりました!)

 

メンバーの二人

TwoSetは二人組ですが、とても対照的で、それでも仲が良くて、二人でやいのやいの言っているのを見ているだけで何だか幸せな気持ちになる不思議な人達です。以下、私なりの二人の萌えポイントです。

 

Eddy Chen(エディ・チェン)以下「Eddy」と表記

  • TwoSetの背が高い方(178cm)
  • 手が大きくて指が長い
  • 相方より1歳年下
  • サブカル好きでミーハー
  • Kpopや日本のアニメが大好き
  • テクニカルな曲を得意とする
  • なんか乙女なところがある
  • イケメン担当
  • 論理的で何事にもバランスが良い
  • お調子者キャラ
  • コントではムカつくタイプのボケ役
  • コントではキレるタイプのツッコミ
  • ゴ○ブリが大の苦手
  • 絶対音感(perfect pitch)を持っている

Brett Yang(ブレット・ヤン)以下「Brett」と表記

  • タレ目で黒縁メガネがトレードマーク
  • 小柄(といっても170cm)で、手が小さめなのがコンプレックス
  • 手が綺麗(白くてツヤツヤでずっと見ていられる)
  • 声が低音で心地良い
  • 相方より背が低いけど1歳年上
  • ポップスには全く興味がない
  • 日本のアニメや漫画が大好き
  • 音楽面では職人のように的確な仕事をする
  • 情緒的な曲が得意
  • 音が綺麗
  • バイオリンのこと以外では基本ポンコツ
  • コントでは天然ぽいボケ役
  • コントでは無言で無表情のツッコミ
  • 笑顔がかわいい
  • ゆるキャラ
  • 天才肌の狂気
  • オーストラリアで開催されたG20サミットで、オバマ前大統領や安倍元首相など各国の代表を前に演奏した経験があり、将来を嘱望されていたバイオリニストだったという過去がある(「どこで間違ったのかな〜」「I had dreams….」というのが持ちネタ)

 

はい、私はどちらかというとBrett推しなので、少し偏りがあるかと思います。

 

年下のEddyの方が背が高くてしっかりしていて、年上のBrettが基本ポンコツなので、クラシック界の「中川家」といえるかもしれません。また、ボケ・ツッコミが固定していないので、クラシック界の「笑い飯」ともいえるでしょう。二人ツッコミ、二人ボケになることも多々あります。また、二人は中学生の時に数学の塾で隣同士になって知り合い、その後同じユースオーケストラにいたことを知った、という運命の出会いからずっと親友でいるのですが(音大も同じ)、そういった意味ではクラシック界の「サンドウィッチマン」ともいえます。芸風は相方愛に溢れており、相手のミスなどを茶化すことはあっても、基本褒め合っているので、クラシック界の「おぎやはぎ」と言っていいでしょう。(1年半ほど前にEddyもメガネになりました)

 

この、個性の全く異なる二人が、クラシック音楽演奏家を題材にしたコントをしたり、ゲームをして得点を競ったり、モノマネをしたり、リアクションしたり、様々な楽器に挑戦したり、視聴者からの投稿にコメントしたり、料理を作ったり、他ジャンルのユーチューバーとコラボしたり、ただふざけていたり、大爆笑しているだけだったり、たまに真面目にバイオリンを弾いたりする膨大な数の動画を8年間も作っているのです。初期はプロのオーケストラに所属しながら動画作りをしていました。

 

オススメ動画

オススメはいろいろありますが、音楽経験者には「あるある」動画がオススメです。その中でも私が最初に観た記念すべき動画はこれです。↓世界中のプロ、アマ問わず、みんな同じこと考えて演奏しているんだな〜というのに何だか感動したのを覚えています。

■13の大作曲家と演奏している時の気分


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それから、これは私の娘がお気に入りの動画です。↓この動画では、ただでさえ難曲のデュオ曲、サラサーテ「ナヴァラ」を、大人用のフルサイズから始めて徐々に子ども用の楽器に小さくして演奏していき、最後は3歳児用のサイズを弾きます。普通のプロバイオリニストがこういうことにチャレンジすると、どんなに楽器が小さくてもきちんと音程を取って見事に演奏しようとするし、そういう動画は多いのですが、この二人は息はピッタリなものの、全然弾けていなくて、爆笑しながら楽しそうに弾いているのです。そこが大好き!

■分数バイオリンで演奏


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一方で、彼らはただ速く弾くだけとか、踊りながら弾いて当て振り(楽器の口パクにあたる)をしているとか、「音楽」をしていないイカサマ音楽家が大嫌いで、そういう人物を見つけてきてはレビューをし、厳しいツッコミを入れます。(この手の動画も膨大にあるので代表的なものを一つだけご紹介。ここからこの番組の名言「Sacrilegious! 」が誕生しました。元々は「神聖な」という意味の単語ですが、「何だか胡散臭くて怪しげな」という意味で番組内で使われるようになりました)

■世界一速い(そして最も不正確な)バイオリニスト


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また、ドラマや映画でバイオリンが雑に扱われていると、それにもことごとくリアクション動画を作り、厳しくつっこみます。彼らが言いたいのは、「バイオリンを登場させるなら、きちんとプロのアドバイスを受けるなり、ちゃんと弾ける役者を使うべきだ」ということなのです。プロに敬意とお金を払って!と。そんなバイオリン映画へのリアクション動画(これも数多くある)の中でも傑作なのがこれ(10:27から、ボーナス映像として、二人が「実際に出ているであろう音」を映画に当ててくれています。)↓

■今までみた中で一番最低のバイオリン映画


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一方で、才能ある音楽家には、たとえそれがどんなに小さな子どもでもリスペクトを惜しみません。実際、バイオリンはピアノと違い、3歳児からのサイズがあるので、手の大きさのハンデが少なく、どんな難曲でも、弾ける子どもは弾けてしまうのです。世界にはそのような神童(prodigy)がいて、そういう子たちの動画を見つけてきてはリアクション動画を作っています。ただリアクションするだけでなく、自分達でも弾いてみて、その違いや難しさを視聴者にわかりやすく(?)伝えてくれます。日本人prodigy、吉村妃鞠さんへのリアクション動画がこちら↓(ちなみに吉村さんがご自身のInstagramでフォローしているたった6アカウントのうちの1つがTwoSet アカウントでした笑)

■7歳が見せつける時


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バイオリニストとしての顔

普段は「ちゃんと弾けない」という自虐的なネタが多いTwoSet ですが、真面目に弾いたらちゃんと弾けます一応。一つ上の動画で吉村さんが弾いていたのは、この動画の最高レベル12の曲です↓

■バイオリン演奏12レベル


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普段のYouTube動画でも端々から彼らのバイオリニストとしての顔は見えるのですが、それが一番わかりやすく、見る側として興奮したのが、協奏曲のライブストリーミングです。「協奏曲」は、バイオリンの名手がソリストとして、オーケストラをバックに演奏する曲で、複数楽章(基本は3楽章)から成る大曲です。登録者数が100万人増えるごとに行うのが今や恒例となりました。

初めて行われたのが、2019年2月の200万人記念。3楽章通すと40分くらいかかる大曲を、2挺のバイオリンで(相方がバックのオーケストラパートを担当)、しかも楽しそうに弾き切りました。この動画で、バイオリン協奏曲を初めて通して聴いた、という若い人もいたのではないでしょうか。そして、笑顔で時々ふざけながらもスッとスイッチが入る瞬間、緊迫感、躍動感…。それをカメラを通して間近に観て、バイオリンてこんな楽器だったんだ!とびっくりした人が多かったんじゃないかと思うんです。

 

■登録者数200万人記念のライブストリーミング(2019年)

チャイコフスキー/バイオリン協奏曲(ソロ:Brett 伴奏:Eddy)


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そして、これから一年足らずで300万人を達成します。風船持ってるBrett がかわいい。

 

■登録者数300万人記念のライブストリーミング(2020年)

シベリウス/バイオリン協奏曲(ソロ:Eddy 伴奏:Brett)


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実はこのひと月ほど前にBrettが体調を崩してしまい、動画制作を一ヶ月くらい中断していました。そんなこともあって、300万人の時は本当に感動的でした。上の2つの動画はなぜかずっと観ていられる…。

 

コメディとシリアスのバランス

TwoSet の魅力として、コメディ要素とシリアス要素のバランスがあります。彼らは並のプロよりも上の実力者でありながら、プライドを捨てて道化に徹することができ、若者文化にも親しんでいるからこそ、生み出された傑作動画が数多くあります。その中から、私のお気に入りの動画を一つご紹介します。ネット上で世界的に流行したミームである「棺ダンス」をネタにしたものです。原曲をバイオリンアレンジにして、「初心者レベル」→「中級者レベル」→「プロレベル」→「名人レベル」と順に演奏してみせる…というところまではよくありがちな感じがします。しかしそこから(練習中、ソファに楽器を置いて席を外したBrettのバイオリンの上に、ゲームをしに戻ってきたEddyが知らずに腰をおろしてしまい)逝ってしまったバイオリンを収めた楽器ケースを棺に見立てて笑顔で踊る二人。そして最後に全部のアレンジを重ねて聴かせるところに唸らされます。しかも、「プロレベル」のアレンジにはシベリウスの協奏曲が、「名人レベル」のアレンジにはパガニーニが聞こえるようになっているのです。

■バイオリン難易度5レベルで棺ダンス


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ライブへのこだわり

彼らは2017年に、世界で初めてのクラウドファウンディングによるクラシック音楽の世界ツアーを成功させています。YouTubeで人気が出たとはいえ、クラシック界ではまだまだ無名だった二人。足りない資金をキックスターターや路上演奏で集めました。目標金額が集まるまで寝ずに路上演奏する、という無謀とも思える挑戦をし、交代で寝袋に寝て演奏し続けたのです。この時に知っていれば、私もサポートしただろうなあ。私が彼らを見つける前の話です。オーストラリアのシドニー、ピット・ストリートでファンと一緒に弾いて寄付を呼びかける姿は、会いに行けるアイドルです。

■TwoSetキックスターター:世界初クラウドファンディングで資金調達したクラシック音楽のツアー


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彼らはユーチューバーとしての活動をする前はプロのオーケストラに所属するような演奏家でした。テレビやYouTubeなど映像の世界では、口パクや編集など何でもできてしまいますが、そういうことを動画を通じて激しく糾弾するのは、幼少期から、ごまかしのきかないホールでの生演奏のための鍛錬を積んでプロになった人達に対する敬意なのだと思います。そしてもちろん自分達もそうしてきたわけです。だから、やっぱり音響の良いホールで、ステージで演奏したい!自分の音を届けたい!という音楽家としての気持ちはずっと持っていたのだと思います。2020年には、再び世界ツアーが予定されていました…が、パンデミックによって全て白紙になってしまいました。(ついこの間の2021年の年末に、バーチャルで3公演の世界ツアーが行われました!)

 

日本でもっと人気出て!

ところで、2020年に行われる予定だった世界ツアーには日本が含まれていなかったのです。彼らは日本が好きで、たまに日本語を話しているし(「ナニィ?」とか「センパイ」とかだけど…)、プライベートでも動画制作でも、何度か来日しているのですが、ツアーの日程に日本の地名がどこにもないのです。理由はおそらく、「日本では彼らの名前が知られていない」。アジア・オセアニア、ヨーロッパ、北米各地で売り切れが続出した彼らのコンサートが、日本でまだ開かれていないことは本当に残念でなりません。それどころか、日本にとって大きな機会損失です。

 

だから、私はこの記事を書いています。日本の人にも、もっともっと届いてほしい。彼らの活動を知ってほしい。TwoSetを大好きになってほしい。いや、TwoSetのことは嫌いでも、クラシックのことは嫌いにならないでください。でも、TwoSetを好きになったら、絶対にクラシックのことが好きになるはず。クラシックは退屈で、単調で、真面目なものなんかじゃない。劇的で、ロックで、アヴァンギャルドで、エキサイティングなものだっていうことが、届いてほしいのです。そしてそれこそが、彼らの願いなのです。(だから繰り返しストラヴィンスキーを取り上げてるんだと思います。)

 

今の私の生きる意味は、大げさではなくて、彼らです。TwoSetがいたから、彼らの活動があるからこそ、私が日本語でブログを書く意味が生まれたのです。日本で、しがない国語科教員をしていた私が、ひょんなことから英語圏で生活をすることになり、日本語からひき離され、職を失い、生きていくための英語の勉強と自分の趣味と娘の習い事のために見ていた動画について、「日本語で書く」ことの意味を与えてくれたのが、彼らでした。日本で彼らのことをよく知らない人、もっと知りたいと思っている人のために、「日本語で情報を届けたい!」。そういう気持ちにさせてくれたのが、彼らだったのです。

 

私よりもクラシック音楽が好きで、知識も豊富な人はたくさんいると思います。同じように、英語が堪能で、二人が言っていることをそのまま理解できる人も大勢いると思います。でも、ちょっとだけクラシック音楽を知っていて、英語もなんとかギリギリわかって、なおかつ、TwoSetの二人のことが大好きで、もっともっと日本の人に知ってほしい!と思い、持てる時間と日本語力を費やしてブログを書き続けている人は、どうも、この地球上で私くらいしかいないようなのです。(他にこんなブロガーさんがいらっしゃったらぜひお友達になりたいです!)

 

このブログがきっかけでTwoSetを愛してくれるようになった読者の方、このブログにコメントを書くためにわざわざはてなアカウントを作って下さったTwoSetフォロワーの方、そんな方々に出会えたのも、このブログのおかげです。私のクラシック音楽への関心と、英語の必要性、どちらかが欠けていたら、TwoSetには出会っていなかったでしょう。出会っていなければ、この記事も書いていないし、音楽とTwoSet を愛する素敵な読者の方々とも出会えなかったでしょう。

 

それは、いってみれば、彼らと同じなのです。TwoSetよりバイオリンが上手い人なんて、日本国内だけ見てもたくさんいます。もっと面白いことやおバカなことをして人を笑わせる人も、星の数ほどいます。でも、彼らほどバイオリンを弾けるのに、おバカに振り切ることができる人は、これまで地球上に誰もいなかったのです。あそこまで鍛錬を積んで、幼少期から全ての楽しみの時間を練習に注ぎ込んだからこそ出せる音を出しながら、それまでのプライドを全部捨てて自虐と道化にまわれる人なんて、この世にいなかったのです。しかも、本人たちがそれを心から楽しんでやっていることに視聴者は心が救われるのです。元気づけられるのです。そして、「練習しよう!」という気力が湧いてくるのです。

 

今やクラシック界は、彼らを無視することができなくなりました。世界的なトップ若手バイオリン演奏家の登竜門の一つである「ユーディ・メニューイン国際コンクール」も、2021年(本当は2020年に招待されていたもののパンデミックで一年延期)に彼らをコンクールのゲストとして招待し、ジュニアの部決勝進出者へのインタビューを(コンクールの歴史上初めて)行いました。また、創刊130年(!)を誇る老舗弦楽器専門誌「The Strad」の表紙にもなり、インタビューなど特集も組まれました。世界的バイオリニストであり、「神」の一人マキシム・ヴェンゲーロフ氏とコラボしたマスタークラス(上級者に行うレッスンのことで、Brettがレッスンを受けた)動画では、「君と仕事ができて本当に嬉しいよ。君の動画全部観てるよ。」と(リップサービスだろうけれど)言われています。

 

TwoSetは今やクラシック界ではフォロワー数がダントツのインフルエンサーです。TwoSetが「神」と崇めるバイオリニスト達は、フォロワーにとっても「神」になります。ネット上に多くのファンを持つ彼らとコラボレーションすることは、伝統的な演奏の名手にとっては新たなファンの獲得につながるし、TwoSetにとっては「箔」がつく、win-winの関係なのです。クラシック界にとって、テレビ番組やYouTube喝采を浴びるような「アーティスト」ではなく、芸術家としての音楽家にもっと敬意を払い、脚光を浴びるように一般聴衆を「教育」しつづけてくれているTwoSetの活動は、硬直しかけていたクラシックの世界に福音をもたらすものなのでしょう。(動画の後半、憧れのヴェンゲーロフ氏のレッスンを受けるBrettが本当に尊い↓)

■4つのレベルのマスタークラス(ft. マキシム・ヴェンゲーロフ


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■バイオリンの神8


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ここまで読んで下さったあなたは、もう、TwoSetがただガシガシ弾いているだけの動画をもっともっと観たくなってきただろうと思います(ありますよ)。二人がバイオリンも持たずにただ楽しそうに談笑している姿だけでもいいとすら、思えるようにもなったかと思います(たくさんありますよ)。そして、手当たり次第に動画を再生して楽しむ生活が1,2ヶ月続いた後……二人が画面に映っていなくても、関連動画として右側に出てきたバイオリンの名手による演奏を聴くだけで、「あ、これEddyが、Brettが、弾いてた曲だ…!」と心が高鳴るようになることと思います。それが、沼です。

難しいところをガシガシ弾いてるだけの動画↓

■10レベルのバイオリン協奏曲カデンツ


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クラシックは、言葉の通り、「古典」です。長い年月を生き残り、誰もが知っている「元ネタ」、それが古典です。古典は、「誰もが知っている」ことを前提にして現代の私達の前に現れますが、「元ネタ」の知識がないと面白さは半減、というか、半分以下になってしまいます。逆に、少しでも知っていると意味がわかり、意味がわかると面白さがわかるのです。そのためには知識が必要なのです。

 

TwoSetは常々、「クラシック音楽をより多くの人に届け、次の世代をインスパイアし続けたい」(公式HPより和訳)とか、「クラシック音楽を次世代と関わりを持たせ、未来へつなげていくことが使命」(2021バーチャルワールドツアーより意訳)と公言しているように、たくさんの面白動画と少し真面目な動画を通じて、若者文化を楽しむ人達やクラシック音楽に興味がない人達に、知識としての「元ネタ」を刷り込み続けています。

 

彼らを日本でもっと認知してもらうことは、日本の文化がより豊かになることに繋がるはずです。文化は異なるものと出会った時に、触発され、変化し、豊かになっていくからです。日本でクラシック音楽は、馴染みのない人たちにとっては長い間、「西洋音楽」という外国からやって来た、どこか権威的で恐れ多く、崇高で不可侵のものとして扱われてきたような気がします。それが、こんなに面白いなんて!とTwoSetに出会って内面から触発された(特に若い)人達がどのように自国の文化を変容させていくのか、見てみたい気がしませんか。

 

そんなことは抜きにしても、ただ単に、日本でこの二人に会ってみたいと思いませんか。一応まだ、「会いに行けるアイドル」なはずです。人気が出る前にファンになっておくことを全力でオススメします。そして次に世界中のホールを回るワールドツアーが行われる時、開催地に日本の都市名を一つでも二つでも増やしていきましょう。

 

10000字少しオーバーしちゃいましたが、以上です!