国語の教員でしたが、アメリカで子育てをして、日本に帰国しました。

高校の国語科教員を退職し、長女が1歳の時に渡米し、2022年に帰国しました。3人目も無事出産しました。

「擲弾兵」って何?他2曲

バイオリン スズキ2巻

スズキのバイオリン教本2巻は、童謡や練習曲が多かった1巻と異なり、曲が有名作曲家の「作品」ばかりになって、弾き甲斐があると思います。

ただ、私自身、曲について知らないことが多くて、疑問に思ったことや娘にきかれてもわからなかったことばかりでした。今回はその2巻の曲について、調べて面白かったことをざっくりと書きたいと思います。

 

二人の擲弾兵

英題では「The Two Granaderes」なのですが、そもそも「擲弾兵」とは何なのでしょうか。「擲(てき)」は「投擲(とうてき)」という言葉があることから、「投げる」ことかなと何となく推測できますが、では「擲弾兵」とはどのような兵隊なのでしょうか。

 

ウィキペディアで調べると、「擲弾兵」とは、

 

近世ヨーロッパ陸軍で組織されていた歩兵部隊の一種。当初は擲弾(Grenade)の投擲を主な任務としていた。

 

 

とあり、要するに手で爆弾を投げる歩兵、ということのようです。ただそれだけではなくて、彼らは任務上敵地に接近して重い擲弾を投げる必要があることから、体格が良く、精神的にも屈強で勇敢な者が選ばれたのです。ですから、「擲弾兵」は精鋭歩兵ということを表しているのです。このことから後に近衛兵もそう呼ぶようになりました。

 

コロナ中はバイオリンの先生がグループレッスンをZoomでレベル別に行ってくれていたのですが、この曲をみんなで弾いた時に先生が「What's the Granaderes?」と8歳の女の子にきいたのです。その子は「Ah...animals?」と答えていました(笑)。かわいいですね。でも意外と知らないものなんだなと思いました。「Solders」が正解です。

 

時はナポレオン戦争終結直後、ロシアで大敗を喫したナポレオン軍の擲弾兵二人が、捕虜になっていたロシアの地から祖国フランスへ還る途中での一幕です。ドイツの地で、皇帝ナポレオン一世が捕虜になったということを知った二人の対話。二人のうちの一人はもう長くはない様子。自分が死んだら、フランスの地まで運んで埋葬してほしい、胸には勲章を付けて、武器を持たせてほしい、皇帝が復活されたら、その時は自分も墓から出て皇帝をお守りするのだ!と、何とも勇ましいながらも悲哀を感じさせる最後となっています。

この曲はシューマンの歌曲です。詩はドイツのロマン派詩人ハイネの「Die Grenadiere」。作曲は、この詩が発表された20年後の1840年になされました。同年に、リヒャルト・ワーグナーもこの詩のフランス語訳に曲を付けていて、フランス国家「ラ・マルセイエーズ」が引用されているところも丸被りということなのですが、何かあったんでしょうか。

 

私はドイツ語が読めないので、日本語訳は↓こちらの記事を参考にさせていただきました。

franzpeter.cocolog-nifty.com

元々は歌曲なので、やっぱり歌を聴かないとね、といくつか動画を見せました。


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「何て言ってるの?これ英語?」と長女は興味津々なので、物語や背景をなるべくわかりやすく説明してみました。「フランスという国にすごく戦争に強い王様がいて、その王様と一緒に戦う兵士の中に、この二人の擲弾兵がいたんだよ。でもロシアで戦争に負けちゃって、二人は捕まっちゃったの。やっとフランスに帰れることになったけど、王様も捕まっちゃったことを知って悲しんでいるんだよ。最後は、自分は死んでも墓から出て王様を守るんだ〜って言ってるんだよ」だから最初はD Minor(二短調)で悲しい感じで始まって、後半はD Major(二長調)に転調するんだね」。あと、後半のカッコイイところはフランス国家のフレーズだということも伝えました。

 

正直、なんでまだまだ初歩の2巻の中盤でこんな転調があって起伏のある曲を弾かせるんだろう…と謎でしたが、グループレッスンでも子どもたちが大好きな曲で、盛り上がります。実は自分自身はこの曲を弾いた記憶が全く無く、完全に忘れていました。多分あまりうまく弾けなかったから避けていたんじゃないかなと思います。でも、こうやって曲の背景を知ると、弾くのがより楽しくなるかなと思います(ここまで調べたのはこの曲くらいなのですが)。曲調や感情の変化なども、歌で聴いた方が表情があってわかりやすいかなと思います。(ちょっと怖いくらい…)。元の歌曲では後奏がまた短調に戻っていて、一人の擲弾兵の死を感じさせます。皇帝ナポレオンに対して、ここまでの忠誠があるのも、エリート精鋭兵である「擲弾兵」だからなんだというのは、知っていると納得がいきますね。

 

ベートーヴェンメヌエット

Beethovenは長女もさすがに名前は知っていて、交響曲第9番4楽章の「歓喜の歌」が好きなので親しみを覚えていたようです。「この曲も有名なんだよ」と、セサミストリートでイツァーク・パールマンさんが演奏した動画を見せました。


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長女は、セサミストリートは実際あまり見たことはないのですが、エルモとかの人気キャラクターはさすがに知っていて、子ども向け番組であることも知っています。子ども番組でも演奏されるくらい、この曲はメジャーな曲なんだ!ということを知って、若干モチベーションが上がったようです。(この曲は、学校のオンライン授業中に弾いて発表していたこともあり、先生も知っていてくれて嬉しかったようです)でも、この動画の影響か、後半のTrioから妙に速く弾くようになってしまいました。先生はそういう指導はしていなかったはずです。(あ、でもよく見たらpiu mossoて書いてあるから間違っていないのか!と今気づきました…)

 

2巻じゃないけれど…ユーモレスク

今長女は3巻のユーモレスクに挑戦中です。バイオリン始めた時から絶対弾けるようになりたいと言っていた目標の曲でした。

アウグスティン・ハーデリックさんの動画

カタカナ表記が違うかもしれません…Augustin Hadelichさんです。


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この方、15歳の時に火事に遭い全身大火傷を負ったそうです。生死の境を彷徨ったからなのか…この世のものとは思えない美しい音色を出すなあ〜と、動画を見るだけでいつも魂を持っていかれます。ご自身のYoutubeチャンネルをお持ちなので、もちろん登録しています。無料でいいの!?というクオリティの動画達です。本人が喋ってる動画もあって、興味深いです。両親ドイツ人のイタリア出身ですが、学校はジュリアード出身なので英語も堪能なんですね。

 

さっきのパールマンさんの動画も見せたら長女は喜んでました。(ヨーヨー・マさんと小澤征爾さんも一緒)↓


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子どもでも、こういう音を聴かせると、その直後から素直に音が変わるので面白いです。