国語の教員でしたが、アメリカで子育てをして、日本に帰国しました。

高校の国語科教員を退職し、長女が1歳の時に渡米し、2022年に帰国しました。3人目も無事出産しました。

インターナショナルプリスクールでの1週間

これまで日本語教育を優先してきた娘ですが、この秋(新年度)からインターナショナルプリスクールへ行くことになりました。

娘のこれまでの集団生活は以下の通りです。

  • 7ヶ月〜1歳9ヶ月–  日本の公立保育園
  • 1歳10ヶ月– 2歳5ヶ月– 渡米、自宅で保育
  • 2歳5ヶ月〜3歳 –  日本語保育園、週一回日本語教室
  • 3歳–  インターナショナルプリスクール入園

 

さて、このインターナショナルプリスクールでは、どういうことをしているのでしょうか。基本的には英語を使い、午前と午後に45分くらいずつ任意の言語のクラスがあり、全員そろってのサークルタイム(お集まり)では全言語であいさつをしたり歌ったりするらしいです。英語の他にスペイン語、中国語、日本語の先生がいます。

全員英語ネイティブの先生で、ネイティブの子ども達向けのプリスクールへ通うのは、子どもというよりは私の方がきついかなと思ってしまい、いいとこ取りのこちらの学校に決めました。(アメリカの中でもけっこう珍しいと思います)

果たして、そんなに一度にいろいろな言語にさらして大丈夫なのかと思われるかもしれません。私も最初はそう思いました。しかし、子どもの適応力というのは計り知れないものがあります。頭の柔らかいうちにいろいろな言語を聞いたり、話している人と接することは、良いことはあっても悪いことはないと思いました。しかも日本語も教えてもらえるわけです。そんなわけで、日本人の子はうちの他にも何人かいます。でも、あとの子どもはほとんど現地のネイティブという印象を受けました。

我が家(というか私)のこれまでの方針を転換して、娘を英語にもっと慣れさせようと思った理由は、娘の日本語の理解が進んできて、英語と日本語の区別がつくようになってきたことが大きいです。日本語と日本語以外の言語、という概念が彼女の中にできてきたようなのです。それならば、日本語と英語がごちゃまぜになる、いわゆる「ルー語」(笑)になることもないのではないか、という淡い期待を抱きました(こっちの小学生になると、日本語が「ルー語」になってしまう、という話はよく聞きますが…)。それに、キンダーガーテン(義務教育の幼稚園のようなもの)から英語だけの環境になると、いくら「一年もあれば英語をしゃべるようになる」と言われても、小学1年生になった時に3歳児レベルにようやくなるようではかわいそうじゃないか、と思ったのです。もしもこの国に長く住むことになるなら、義務教育もネイティブと遜色ないレベルからスタートさせないと、マイノリティにとっては圧倒的に不利になる…そういう焦りもありました。現に1歳からアメリカにいるのに、ほとんど英語ではコミュニケーションを取ることができない(する気がない)娘を見ると、ちょっと焦らざるを得ませんでした。

さて、スクールの雰囲気はとにかくアットホームです。というか、普通の一軒家です。それまで「いかにも保育園」という感じの保育園へ通っていたので、「今度からここへ通うよ」と言われて娘も最初は戸惑ったかもしれませんが、すぐに「お家の幼稚園!」といって気に入ったようです。そこで、10人ちょっとの子ども達が、草木に水をやったり、コップを洗ったり、ちょっとした料理のお手伝いをしながら、遊んだり工作したりちょっとお勉強したりするのだそうです。いいな、私も通いたかった、こんなところ…。

前置きが長くなりましたが、そんなプリスクールへ、先週から通い始めました。今日までの娘の変化を書いておきたいと思います。

 

OPEN HOUSE の日

新年度が始まる前日、オープンハウスといって、園児とその家族が自由に校舎の中に入って遊んだり、先生達と話をしたりできる日がありました。この日、次女の病院の予定があったためあまり長い時間はいられなかったのですが、2組の日本人家族に会うことができ、私は少し安心しました。娘も、日本語を話すお友達がいてほっとしたのではないでしょうか。翌日の1日目もすんなり行くことができました。あと、園のお手洗いで用を足すことができました(ご褒美のおやつ作戦でなんとか成功しました)。これができただけでもう万々歳。翌日からの心配がだいぶ減りました。

1日目

特に慣らし期間などなく、いきなり9時〜13時まで預けることになっていました。大丈夫かなと思っていましたが、大好きな「お弁当」を持って元気に出発(保育園は給食でした)。少し準備に手間取ったため、時間より遅めの到着になってしまいました。入り口で、やはり今日が初日の男の子が、お母さんと離れられず中に入るのを渋っているところに遭遇しました。娘も一緒に中に入ろうと先生に誘われて、そのまま入って行く娘。振り返りもしないのは、日本にいたときから変わりません…。君はいつも前を向いていて偉いと、母は思います。日中、娘の遊んでいる写真を、先生が携帯へ送ってくれました。

お迎えは、さすがに疲れたのか、車の中で理不尽な理由で大泣きしたものの(持って来たおやつが少なすぎるというもの)、ひとしきり泣いたらすっきりしたのか、堰を切ったように日本語でしゃべり続けていました。

2日目

朝、相変わらず英語であいさつはできません。でも、よく考えたら日本語保育園でもできていませんでした。反抗というのではなくて、はずかしがってできないのです。しかし、帰りの時は、日本語の先生に笑顔でバイバイできました。日本人の女の子のお友達と仲良くしているのだそうです。「Clean up(お片付け)」という言葉を覚えてきました。

3日目

朝、英語をしゃべる先生がお迎えに出て来てくれた時、車の中から笑顔で手を振れました。まだあいさつはできないのですが、娘が心を開いている証拠です。それだけで、娘が楽しく過ごしているということがわかって、嬉しかったです。

4日目

前日の夜、長女はソファから転落して、小さいもののコブができてしまうくらい頭を強く打ってしまいました。朝まで冷やしましたが、朝もまだ少し膨らんでいたので、大事を取って休ませようとしましたが、娘は「おうちの幼稚園行く!」と行く気満々でした。結局元気なので行くことにしました。

帰ってきたら「More」という言葉を覚えてきました。この頃から「r」の発音がしっかりしてきたなと思います。

5日目

 「これは何色?」と聞くと、日本語と英語で答えてくれました。iPadに入れたひらがな練習アプリにも挑戦し始め、英語だけでなく日本語に対する興味も薄れることなく、むしろ強まっているのかもしれないと感じました。

6日目

スペイン語のあいさつの歌を覚えてきました。日本語では「グーチョキパーで何作ろう」として有名な「Are you sleeping ?〜」のメロディーでした。

また、家でのことですが、6日目の今日、なんと、初めて、日本語の絵本の文字を自分で読みました。それまで、表紙だけとか、一部分だけは読もうとすることがあったのですが、中身はほとんど覚えて読んでいました。しかし今日は、しばらく読んでいなかった赤ちゃん用の絵本を次女のために持ってきたところ、長女が一つひとつ文字を読み始めたのです(『かお かお どんなかお』)。ひと昔前のコンピュータの読み上げ機能みたいな読み方だったので、本当に文字を純粋に読んでいたのがわかりました。うちの子はいままでそんなことをしたことがなかったので、ちょっと感動しました。

 

6日間を終えてみて

英語のプリスクールへ行かせるのは、日本語がおろそかにになりそうで不安だった(というより嫌だった)のですが、期せずして日本語も強化されてきて、とても意外でした。やはり脳は刺激が多いほど活性化するのかもしれません。興味深いです。

英語ができるようになってくると、日本語への興味が失せてしまうのではないかという恐怖はまだ拭えませんが、周りに流される歳になるまではまだ時間はあるので、できるだけ自宅では日本語に取り組ませたいです。

三つ子の魂百まで。3歳のこの一年間で、娘に何をできるようにさせてあげられるか。これからが正念場です。